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不登校の子どもをどうにか学校へ行けるように回復させてあげたい。
そしてその後の人生を楽しく送れるようにしてあげたい。
親としては当然そのように考えるでしょう。
不登校の理由は様々で、本人にもよくわかっていない場合が多いです。
しかし基本的に「心が弱っている状態」であるはずです。
その状態から回復すれば、自然に今まで通りの生活が送れるようになるでしょう。
そのため、不登校からはどのようにして子どもの心を回復させるかが焦点となります。
この記事では、子どもの心の動きを心理学者マズローの提唱した「欲求5段階説」をもとにして考えてみます。
順を追ってお伝えしますので、じっくり読んでいただければ幸いです。
アブラハム・マズローはアメリカで生まれた心理学者です。
「人間性心理学の最も重要な生みの親」と言われ、現在も通用する「自己実現論」という説を唱えました。
それは、【人間は自己実現に向かって絶えず成長する】と仮定し、そのための欲求を5段階にした「欲求5段階説」というものです。
この説で唱えられる欲求には次のような段階があります。
人間の欲求というのは第一段階の「生理的欲求」から始まり、それが満たされると次の段階の欲求が自然と湧いてくるという内容です。
これを不登校になった子どもの心の状態に当てはめてみると、回復までのプロセスがわかりやすいと思います。
ちなみに「学校へ行きたい」という欲求は、この中でいう【第三段階 社会的欲求】に当てはまります。
ここへ到達するまでの心の動きを、次から順に見ていきましょう。
生理的欲求とは、「生命を維持したい」という動物の本能とも言える欲求です。
要するに、「生きたい(=死にたくない)」という欲求で、まずはこれを満たしてあげる必要があるでしょう。
「家にいてご飯を食べさせてるんだからその欲求は満たしているでしょ」と思うかもしれませんが、例えば
などの状況では、生理的欲求を十分に満たせていないかもしれません。
まずは「何も心配ないよ」ということを、子どもが十分に安心するまで伝え続ける必要があるかもしれません。
第一段階で生命維持ができることがわかったら、次は「安全・安心できる環境にいたい」ということになります。
毎日身の危険に怯えて暮らしたいとは誰も思いませんよね。
不登校に当てはめて考えてみると、学校が「安全の欲求」に対応できる環境になっていないということです。
学校に行くと何らかの危険があると思うからこそ、不登校という行動を持って身の安全を確保しようとしているのです。
また、この欲求が満たせていない学校なのに、親の圧力で無理やり行かせようとすると、今度は家の中も危険な場所という認識になってしまうでしょう。
そうなると、今までは不登校でも親に顔を見せたり会話をしたりしていたのが、部屋に引きこもって出てこなくなったり、暴言・暴行などで親を拒絶したり、ゲームの世界などに現実逃避してしまうようになります。
ですからまずは家の中は絶対安全・安心できる場所であるとわかってもらう必要があるんですね。
親としては「家の中を居心地良くしすぎると、学校へ行く気を完全に無くしてしまわないか?」と心配になるでしょう。
しかしそれは大丈夫。
家の中が安全というのがわかってくると、自然と次の第三段階の欲求が出てくるからです。
社会的欲求とは、「何かの集団に属して、社会から必要とされたい」と思うこと。
今までの第一・第二段階で、家族の中でずっと安心して生きていけるのが解ったと思います。
それが続くと「外に出て誰かに必要とされたい」と思うようになってくるのです。
この段階までくると、不登校からの回復まであと一歩と言えるでしょう。
あとは少しずつエネルギーが充電されるのを待ち、時期が来たら学校という外の集団へ入って社会的欲求を満たしていくことに続いていきます。
ただし欲求とはあくまで「自分発信」であるのが大事。
親の目から見て「もう第三段階まできてるから」と思って「明日から学校へ行きなさいね」などと言ってしまうと、また家の中が安全な場所でないという感覚に陥るかもしれません。
ですから、子どもが自発的に学校へ行きたいと言い出すのを待つのがより良い考えだと思います。
ちなみにこれらの欲求が起こるタイミングですが、より下の階層の欲求が十分に満たされることで、自然と次の欲求が発生するようになっています。
簡単に言えば、もし毎日が命の危険にさらされている環境では、
第四段階の承認欲求(=他者から認められたい欲求)や第五段階の自己実現の欲求(=自分の能力をもっと発揮して成功したい欲求)などは発生しないということです。
本文でもお伝えした通り、
まずは第一段階の生理的欲求(=生命を維持したい、本能的な欲求)が満たされて、
第二段階の安全の欲求(命の危険から身を守りたい欲求)が満たされ安全が確保されたのが十分にわかってきたら、
第三段階の社会的欲求へと進んでいくのです。
欲求が起こる原則は、「かならず下段から、そしてそれが十分に満たされた状態になって次の段」となっていきます。
欲求という「心の動き」がこのような順序になっている以上、「何はともあれ学校へ行かせる」と考えてしまうのは避ける方がいいのは間違いありません。
この記事では、心理学者マズローが唱えた「欲求五段階説」をもとに、不登校の子どもの心の動きを解説いたしました。
不登校から復帰は、身の危険がない安全な場所に子どもを置いて、十分に心の充電ができた状態があって、初めて実現します。
親の方は子どもの心の変化に対し、その時々で臨機応変に対応する必要があるでしょう。
大変なことではありますが、子どものその後の人生のためにも、心の仕組みを知っておくのが大切ですね。
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